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YouTube埋め込み動画に広告が出たら困るWeb担当者向けの回避策

記事タイトル画像:YouTube埋め込み動画に広告が出たら困るWeb担当者向けの回避策

2021年6月のYouTube規約改定・仕様変更により、従来広告表示対象外だったYouTube投稿動画が、徐々に広告表示の対象となります。Webサイト用動画をYouTubeでホスティングする際のリスクと、回避策として広告表示除外設定や他プラットフォームへの乗り換えについて解説します。

要点

  1. YouTube規約改定により、今後、Webサイト埋め込み動画に他社の動画広告が表示されたりと、ブランドイメージ的に問題が発生する可能性あり
  2. 大規模チャンネルは「YouTubeパートナープログラム」に登録すれば広告非表示設定が可能
  3. パートナープログラムが使えない場合、Web埋め込み専用の動画は、Webサーバーか商用動画ホスティングサービスに引っ越しを検討
  4. 引っ越し後、YouTubeの継続要否は、チャンネルとしての活用具合で判断

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YouTube規約改定で、これまで広告表示対象外だった動画も広告表示対象になった

YouTubeは2021年6月1日より新利用規約新しいウィンドウで開きますを米国外の利用者に適用させました。(米国は2020年11月から先行適用)

主な変更点の中でも、動画投稿者・Webサイト運営者にとって重大なのが、今後はYouTubeパートナープログラム不参加(広告収入を得ない)であっても、自分の投稿動画(自分が完全に著作権を持つもの)が広告表示対象となる、ということです。

更新された利用規約に関するよくある質問新しいウィンドウで開きますのページでは、主な変更点のセクション内に以下の通り記述されています。

YouTube の収益化に関する権利。YouTube パートナー プログラムに参加していないチャンネルまたは収益化に関する契約を締結していないチャンネルを対象として、ブランド イメージを損なわない一部の動画への広告の掲載を徐々に開始します。これらの広告から収益分配は発生しませんが、クリエイターが参加資格新しいウィンドウで開きます(変更はありません)を満たせば、引き続き YouTube パートナー プログラムに申し込みできます。

利用規約新しいウィンドウで開きますの中では、具体的には[お客様のコンテンツと行動]内の[収益化に関する権利]セクションに記述があります。

お客様は、本サービスにおけるコンテンツの収益化に関する権利を YouTube に付与します(収益化には、コンテンツ上やコンテンツ内で広告を表示すること、あるいはアクセスの手数料をユーザーに請求することが含まれます)。本規約は、お客様に支払いを受ける権利を付与するものではありません。

規約の変更の説明に「徐々に開始します」とある通り、8月現在では、一気に全動画で広告が表示される状況にはなっていません。とはいえ、「収益化登録していないのに動画に広告が出る」という事例は、当社が携わっている範囲でも(具体名は伏せますが)既にちらほら出てきています。自分の動画に広告を表示させたくないサイト/チャンネル運営者は、のんびりしない方がよさそうです。

埋め込み動画も広告表示対象との規定あり

YouTube以外のWebサイト等に埋め込んだ動画新しいウィンドウで開きますについても、広告が表示されることがあるという明確な記述があり、埋め込み先で広告表示だけを無効にすることはできません。

8月時点では、前述の広告表示対象動画も、埋め込んだ状態で広告が表示された例は見当たりません。が、規約上はいつ広告が表示されてもおかしくない状態であり、油断は禁物です。

YouTubeを広告なしの無料動画ホスティング環境として活用していたサイトは注意が必要

これまでYouTubeは、動画投稿者・Webサイト運営者にとって、

  • 大容量・高解像度の動画を無料でほぼ無制限にホスティングできる(自社Webサーバーの増強や商用プラットフォーム契約が不要になり、コストダウンが可能)
  • Webサイト内表示の使い勝手がよい(自動再生・ループ等のオプションが豊富で、マルチデバイス最適化も自動処理)
  • 投稿動画内に勝手に他社広告が掲載される心配がない

という非常に都合のよいプラットフォームでした。しかし今後は「勝手に広告が掲載される心配がない」という利点が失われるため、Webサイト運営者は動画実装の大幅な見直しを迫られる可能性があります。

埋め込み動画がサイトのリスクとなるおそれ

YouTubeのサイトやアプリで動画を視聴するユーザーにとっては、広告表示は日常的に発生しているため、あまり問題になることはありません。

Webサイト運営者にとって今後YouTube利用がリスクとなる理由は、主に、サイト上の埋め込み動画に動画広告やオーバーレイ(バナー)広告が表示されうることにあります。

サイト訪問時にモーダルウィンドウで動画を割り込ませる場合

サイトを開いたときに告知動画をモーダルウィンドウで自動表示・自動再生させる場合、名前も知らない他社のプレロール動画広告が容赦なく表示されることになります。流入元の広告やSNS投稿を見て想定した内容と、流入先のサイト表示が全く違う場合、詐欺と疑われれば直帰リスクが高まります。

YouTubeの動画をメインビジュアル用に埋め込みで使用している

特に問題なのはメインビジュアル等にYouTubeのヘッダー等を隠して無理やり埋め込んでいる場合です。訪問者にYouTube埋め込み枠と認識されなければYouTube広告とも認識されないので、サイトが乗っ取られた危険な状態と認識される確率が高くなります。CSS等でユーザー操作を受け付けない設定にしている場合、スキップもできず長尺の広告が最後まで流れ続ける事態もあり得ます。

そもそもUIを隠してYouTube動画を埋め込むのは規約違反である

埋め込みプレーヤーはYouTube APIを使用して実装されるため、利用する際はYouTube APIサービス利用規約新しいウィンドウで開きますの制限を受けます。

この中の必須機能規定新しいウィンドウで開きます「オーバーレイおよびフレーム」セクション新しいウィンドウで開きますには、「埋め込みプレーヤーの前面にはいかなる視覚要素も表示してはならない」「他の表示要素で埋め込みプレーヤーの機能を無効化してはならない」という規定があります。

You must not display overlays, frames, or other visual elements in front of any part of a YouTube embedded player, including player controls. Similarly, you must not use overlays, frames or other visual elements to obscure any part of an embedded player, including player controls.

違反のペナルティとして、該当サイトはAPI利用(→YouTube動画の埋め込み)を制限もしくは禁止される可能性があります。

回避策1: パートナープログラム登録済みなら、広告の非表示設定が可能

動画投稿者がYouTubeパートナープログラムに登録済みであれば、収益化=広告表示対象にするかどうかを、動画個別の収益化設定新しいウィンドウで開きますでオン/オフにできます。本来同プログラムは広告収入を得るための制度ですが、広告を非表示にするための手段としても有効です。

YouTubeパートナープログラムを利用するには、チャンネルが「公開動画の直近12ヶ月の総再生時間4,000時間以上」「チャンネル登録者数が1,000人以上」等の条件新しいウィンドウで開きますを満たす必要があります。そのうえで利用申請を行い、審査を通過すると、YouTubeパートナープログラムが利用できるようになります。

回避策2: 乗り換え先として商用動画ホスティングサービスを併せて検討

とはいえ、YouTubeパートナープログラムは、事実上、再生時間・チャンネル登録者数の多い大手チャンネルでなければ登録できません。小規模チャンネルの場合は、Web掲載用動画を別の場所に置く選択肢を別途持っておくと安心です。

動画コンテンツの量や同時アクセス数が少なく、かつ動画視聴の分析が不要な場合は、他のファイルと同様Webサーバー内に入れてしまっても十分であることが少なくありません。

動画の量やアクセス数が多く、サーバーの通信速度が低下もしくは不安定になる場合は、CDNやロードバランサー等を導入することで解決できます。ただし、コストが気になる場合、商用動画ホスティングプラットフォーム(Vimeo新しいウィンドウで開きますJストリーム新しいウィンドウで開きますブライトコーブ新しいウィンドウで開きますULIZA新しいウィンドウで開きますメガDOGA新しいウィンドウで開きます等)を併せて検討するのがおすすめです。

その他にもセキュリティや機能的な要件がある場合、要件に応じて実現可能な手段を選択する必要があります。

自社Webサーバーと外部プラットフォームの使い分け
自社Webサーバー内で直接ホスティング 外部の商用動画ホスティングプラットフォームを利用
プラットフォームの追加契約
不要
×
必要
公開前の情報漏洩対策
開発/ステージングサーバー内に直接格納可能

埋め込み可能なサーバーを制限する設定が必要
アクセス集中耐性
CDN/ロードバランサー等で解決可能だが、コストは増える

大量のアクセスが来てもWebサーバーへの負荷を回避
自動画質変換 ×
自分で用意する必要あり

複数画質を自動生成可能
不正ダウンロード対策 ×
ファイルの実体のURLがわかれば容易にダウンロードされる

ファイルの実体への到達は困難
視聴状況解析 ×
ブラウザ内蔵プレーヤーには視聴解析機能はない

管理画面で視聴解析データを見られるものが多い
360度動画・立体視等の特殊形式
外部ライブラリ導入など多少開発コストが発生

プラットフォームによっては標準対応

※プラットフォームによって機能が異なる場合があります。詳細は各プラットフォームのサイト等でご確認ください。

ホスティング先を乗り換えた場合、YouTubeの継続要否は、チャンネルとしての活用具合で判断

YouTubeチャンネルを顧客とのコミュニケーションの場所として積極的に活用できている場合は、Web用の動画を移行したあともチャンネルとしては維持すべきで、失ってしまうのはマイナスになります。例えば以下の場合です。

  • チャンネルトップページや再生リストの整備など、サイトとしての活用が進んでいる
  • チャンネル登録者数を多数抱えている
  • コメント等で視聴者と積極的に交流している
  • YouTubeからサイトへの流入が多い
  • 自サイトの埋め込みプレーヤー以外(YouTubeサイト/アプリ等)での視聴が多い

YouTubeアカウントを単なるサイト掲載用動画の置き場所としてしか使っておらず、チャンネルをコミュニケーション手段として活用する気がないのであれば、必要がなくなった時点でチャンネルを非表示化/削除しても問題ありません。

まとめ

YouTubeは、広告非表示設定にできない場合、今後あらゆる利用シーンで広告が挿入される可能性が高く、企業サイト用動画の掲載先としては不都合が増えることが予想されます。ブランディングのリスクとして顕在化する前に、YouTubeパートナープログラムに登録するか、動画ホスティング先の移行を検討することをお勧めします。

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