デジタルマーケティングTips
Chrome 134 仕様変更発表まとめ
Google Chrome 134の主要な仕様変更発表のまとめです。(ベータ版時点での情報です)
要点
- 追加・拡張:
以下の機能が追加・拡張され、表現力・利便性が向上します
・HDR/SDR素材混在時にHDR素材の輝度を自動調整できる
・dialog要素を閉じる条件(枠外クリック等)が制御可能になる 等
- 廃止・削除:
以下の機能が使用できなくなります
これを使用している場合は設定の移行等が必要になります
・音声入力用の古い制約項目(接頭辞つき)が廃止される
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追加・拡張
CSS:HDR素材のダイナミックレンジ制限
dynamic-range-limit
プロパティ…HDR素材の輝度ダイナミックレンジを制限するプロパティが使えるようになります。
dynamic-range-limit: standard;
…HDR素材の輝度上限を、
white / #ffffff
(SDRの最大輝度)に制限します。dynamic-range-limit: no-limit;
…HDR素材の輝度上限を、
white / #ffffff
より大幅にアップさせます。
(Editor's Draft 2025/02/12版で旧称high
→no-limit
に変更)dynamic-range-limit: constrained-high;
…中間的な設定で、HDR素材の輝度上限を、
white / #ffffff
より多少アップさせる程度に留めます。dynamic-range-limit: dynamic-range-limit-mix();
…輝度上限を計算で調整します。
dynamic-range-limit-mix()
関数を使用して、
dynamic-range-limit: dynamic-range-limit-mix(standard 40%, constrained-high 60%);
のように、standard / no-limit / constrained-high
をそれぞれ指定パーセンテージで混合させた結果を出力に使用します。
輝度ダイナミックレンジの異なる素材(HDRとSDR)が混在した場合、Web制作環境と閲覧環境の差によっては、制作側の意図しない形でHDR素材だけ他より輝度が目立ってしまい、全体のバランスを損ねる(しかも制作側はそれに気づかない)おそれがあります。Web制作・検証側でHDR非対応ディスプレイを使っている場合等は注意が必要です。
このような事態の防止策として、CSS設定によってHDR素材の輝度を制限できると、「ページ内埋め込みでは全体の輝度バランスを重視する」「単独表示ではHDR素材の本来の色彩を見せる」といった使い分けが可能になります。
CSS:選択項目の基本スタイルカスタマイズ
appearance
プロパティ(UI表示のスタイルカスタマイズ)で、以下の指定が可能になります。
appearance: base-select;
…select要素
(選択項目)の表示について、通常ブラウザのデフォルトスタイルになる部分が、CSSでカスタマイズ可能になります。
詳細はGoogleの記事「デベロッパー フィードバックのリクエスト: カスタマイズ可能な選択」にて解説されています。
CSS:ダイアログを閉じるアクションの条件選択
closedby
属性…
dialog
要素(ダイアログ表示)の属性として、
Esc
キー等の「閉じるリクエスト」※やダイアログ枠外クリック等でのアクションを許可するかを設定できます。Popover API
と同様の挙動が可能になります。
枠内閉じボタン 閉じるリクエスト 枠外クリック <dialog closedby="none"> ○
閉じる×
閉じない×
閉じない<dialog closedby="closerequest"> ○
閉じる○
閉じる×
閉じない<dialog closedby="any"> ○
閉じる○
閉じる○
閉じる※閉じるリクエスト
…「戻る」「キャンセル」指示を出す、OS/デバイス標準のボタン/アクションの総称です。
例:
- PCキーボードのEscキー
- Androidの戻るボタンや戻るジェスチャー(シェイクで戻る設定等がある場合)
- アクセシビリティ技術で設定した戻るアクション(iOS VoiceOverの2本指Z等)
- ゲームパッドの標準キャンセルボタン(Bボタン等)
CSS:DOM差し込み有無を判別してCSS分岐
:has-slotted
擬似クラス…
slot
要素(ドキュメントツリー内に別のドキュメントツリーを差し込む際に使うプレースホルダー)に、別ドキュメントの差し込みが行われている場合に限り適用されるCSS設定を記述できます。スロットが空もしくはデフォルト値の場合は適用されません。
HTTPヘッダー:ブラウザ側のプリロードスキャンを抑制する設定
Document-Policy
HTTPレスポンスヘッダー(ドキュメントのポリシーを規定)について、Chromeが以下の構成項目に対応します。
Document-Policy: expect-no-linked-resources
…ブラウザ側が標準で行うプリロードスキャン(サブリソースの推測的先行読み込み)を行わないよう、サーバー側からブラウザに伝えることができます。
推測的先行読み込み処理を行わない方がパフォーマンスが上がると読み切れる場合に効果を発揮します。具体例としては以下です。- HTML内で宣言された外部リソースがリンク切れになっている場合
- 外部読み込みが皆無もしくはごくわずかだったり、別の先読み設定で最適化が完成している場合
JavaScript:明示的リソースマネジメント機能
- メモリやI/O等の各種リソースについて、割り当て・有効期間設定・解放を明示的に行う各種機能
にChromeが対応します。
Web API:開発者ツール向けのタイムスタンプマーカー発行機能拡張
Console API(デバッグコンソール/開発者ツール関連)について、以下の機能に対応します。
console.timeStamp
メソッド(ブラウザ開発者ツール内のパフォーマンス解析ツールに対してタイムスタンプマーカーを発行)の機能が拡張され、以下に対応します。
- カスタムタイムスタンプ
- 継続時間
- 表示選択(トラック、スイムレーン、色指定)
Web API:オフスクリーンキャンバスの属性取得 / キャンバス内画像拡大縮小時のスムージング品質設定
Canvas API(キャンバス描画/操作関連)で、以下の機能が追加されます。
getContextAttributes()
メソッド(キャンバスのコンテキスト属性をオブジェクトとして返す)が、オフスクリーンキャンバス
(DOMツリー外に作られる非表示キャンバス)の
OffscreenCanvasRenderingContext2D
インターフェイスでも使えるようになります。
(従来は描画用キャンバスでのみ有効で、オフスクリーンキャンバスでは非対応でした)imageSmoothingQuality
属性…2Dキャンバスで画像を拡大縮小する場合に、画像のスムージング設定ができるようになります。スムージングの品質を
high
/medium
/low
の3種類から指定できます。
本機能は「Canvas 2D API」では2016年から実装されていましたが、「PaintCanvas API」では未実装でした。今回の拡張により、PaintCanvas APIでも同様のスムージング品質指定が可能になります。
Web API:クロスサイトアクセス集計のデータ上限制御
Private Aggregation API(クロスサイトアクセス解析・集計レポート作成機能)で、以下の機能に対応します。
maxContributions
フィールド…プライベート集計レポート1件あたりで、Shared Storageから呼び出せるコントリビューションデータ数に上限を設定できるようになります。
Chromeで受け付けられる値は1~1000で、1000を超える設定値は1000と解釈されます。
レポート集計運用の負荷(コストに直結する)はコントリビューション数の規模によって変動するため、これらを制御したい場合に活用できます。
Web API:WebGPUサブグループ機能
- WebGPU
(GPUを利用した描画や演算等)で、サブグループ機能が使えるようになります。
単一命令複数スレッド処理(SIMT)や、サブグループ内のスレッド間通信により、演算量の多い処理を効率化させやすくなります。
オリジントライアル(先行試験実装)
サイト管理者がオリジントライアル登録することで、以下の機能が先行利用可能になります。
デジタル身分証用認証APIがPCでもテスト開始
- Digital Credential API(デジタル身分証明書を使った認証)が、Android版Chromeに加えてPC版Chromeでも利用可能になります。
デジタルウォレットアプリ(Android限定)を経由して、電子化された身分証明書へのリクエストおよびレスポンス処理等を行います。
Digital Credential APIの詳細はGoogleの記事「Digital Credentials API のオリジン トライアルのご紹介」にて解説されています。
※オリジントライアルは、サイト管理者がオリジントライアル管理画面から対象オリジン(ドメイン)を登録し、発行されたトークンをHTMLにmetaタグとして設置した場合のみ、期間限定で有効になります。(詳細はGoogleの解説
を参照)
仕様変更
CSS:ハイライト指定対象のCSS適用継承の変更
::selection
(ドラッグ/クリック選択)や
::highlight
(カスタムハイライト)といったハイライト表示系擬似要素へのCSS適用について、継承方式が変更されます。
- 変更前(Chrome 133まで)…入れ子で入っている子要素は、親要素のハイライト擬似要素に指定されたハイライト用CSS指定の適用対象外になります。
↓ - 変更後(Chrome 134から)…入れ子で入っている子要素にも、親要素のハイライト擬似要素に指定されたハイライト用CSS指定が適用されます。
- 変更前(Chrome 133まで)…入れ子で入っている子要素は、親要素のハイライト擬似要素に指定されたハイライト用CSS指定の適用対象外になります。
Web API:Attribution Reporting APIのレポート数制限一部解除
- Attribution Reporting API
(広告効果測定等)で、従来あった「1つのソースあたりの集計レポート数は20件まで」という制限
について、トリガーコンテキストIDが指定されていれば、レポート数20件の上限が撤廃されるようになりました。
Blob URLへのストレージパーティショニング適用
ストレージパーティショニング(プライバシー保護目的で行われる、端末内データ保存領域のサイト/ドメイン別分割)の仕様変更です。
- Blob URL(ブラウザがデータ保存・参照用に
createObjectURL()
メソッドで生成する一時的なURL)が、新たにストレージパーティショニングの対象になります。これによりセキュリティ的にはFirefoxやSafariと同様の実装となります。
- クロスサイトアクセス追跡情報をBlob URLに保存・参照する場合、埋め込み元ドメイン名(トップレベル/フレームオリジンおよび
has-cross-site-ancestor
のブール値)をストレージキーに指定しないと、クロスサイト追跡が遮断されます。 - レンダリング処理によりBlob URLへの別ドメイン遷移(トップレベルナビゲーション)が発生する場合、強制的に
noopener
(遷移先から遷移元へのアクセス権を遮断する)扱いになります。
PartitionedBlobURLUsage
ポリシーを設定すると、同ポリシーが有効な間は元の仕様に戻せます。 - クロスサイトアクセス追跡情報をBlob URLに保存・参照する場合、埋め込み元ドメイン名(トップレベル/フレームオリジンおよび
廃止・削除
Web API:音声入力の古い非標準制約への対応終了
Media Stream API(音声/映像のストリーミング処理)で以下の旧仕様が廃止されます。
getUserMedia()
メソッド(デバイスからの入力許可をリクエストする)について、標準化以前からChromeがサポートしていた、プレフィックス付きの非標準制約(goog-○○)が削除されます。
影響を受けるのは音声入力です。該当する制約を使用している場合は、標準化された制約に移行することで影響を避けられます。放置した場合は制約が無効になり、デフォルト設定での音声取得となります(無音になったりはしません)。
※参照:Chrome 134 beta - Chrome for Developers (2025/02/05)
https://developer.chrome.com/blog/chrome-134-beta
Roadmap - Chrome Platform Status
https://chromestatus.com/roadmap
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